長年にわたり警鐘が鳴らされ続けてきた少子化問題。その現実がいよいよ私たちの目の前で形を伴って進行しています。2024年、日本で生まれた子どもの数がついに70万人を下回りました。
これは統計を取り始めて(1898年)から初の事態であり、過去127年の中で最も出生数が少ない数字になり、日本の人口構造と社会のあり方に大きな転換を迫る出来事です。
なぜこのような急激な変化が起きているのか、そして私たちは何をすべきなのか。今こそ真剣に考えるときです。
2024年度 日本で誕生した子どもの数は68万6061人
厚生労働省の「人口動態統計速報」によると、2024年に日本で生まれた赤ちゃんの数は68万6061人でした。前年(2023年)の出生数72万6831人と比較すると、実に4万人以上の減少です。この数字は、かつての「団塊ジュニア世代」が出産期を迎えた2000年代初頭の110万人超えと比べると、4割近くも減っていることになります。
出生数の急激な減少には、未婚率の上昇、晩婚化、経済的不安、育児と仕事の両立の困難さなど、複数の社会的要因が絡んでいます。また、コロナ禍以降、将来への不透明感が若い世代に強く影を落としたことも無視できません。
国の予想より15年早く
さらに衝撃的なのは、この数字が「想定外」のペースで進行しているという事実です。国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した将来人口推計では、出生数が70万人を下回るのは2040年ごろと予測されています。ところが現実は、予想を15年以上も前倒しする形で事態が進行しています。
これは、従来の少子化対策が効果を上げきれていないこと、また社会環境の変化がそれ以上のスピードで進んでいることを示しています。育児支援金の拡充、保育所の整備、産休・育休制度の改善などは一定の前進を見せてきたものの、根本的な人口減少のトレンドに歯止めをかけるには至っていません。
2024年の死亡者数は160万5298人
出生数の減少とともに、死亡者数の増加も顕著です。2024年の死亡者数は160万5298人と、戦後最大を記録しました。高齢化の進展により、今後も死亡者数はしばらく高止まりが続くと見られています。結果として、「自然減」は過去最大級の規模に達し、人口は年々急速に縮小しています。
これは単に人口が減るという話にとどまりません。地域社会が成り立たなくなり、医療・介護・交通・教育といった公共サービスの維持が困難になります。地方の消滅、税収の減少、経済成長の鈍化 -そのすべてが連鎖的に広がる可能性があるのです。
現役世代はますます負担が大きく
社会保障制度の構造は、「多くの若者が少数の高齢者を支える」ことを前提としています。しかし現在の日本は、この前提が完全に崩れつつあります。高齢者1人を支える現役世代の人数は、1990年には約5人でしたが、2024年には約2人以下にまで減少しました。さらに将来的には、1人で1人を支える時代も現実となる見通しです。
この状況は、年金保険料や健康保険料の引き上げだけでなく、社会保障給付の抑制という形でも現役世代の生活に重くのしかかります。教育費の高騰、賃金の伸び悩み、将来不安といった課題が若年層の結婚・出産意欲をさらに下げ、悪循環が続いていくのです。
これから訪れる時代の荒波に備えを
では、私たちはこの荒波を前にどう向き合えばよいのでしょうか。ただ嘆くだけでは何も変わりません。大切なのは、「人口が減る」ことを前提とした社会のデザインに舵を切ることです。
人口減少は、避けがたい「未来」ではなく、すでに始まっている「現実」です。 それにどう立ち向かい、どのように未来を築くのか -それは私たち一人ひとりに託された課題です。変化を恐れるのではなく、変化をチャンスに。いま、私たちに問われているのは、次の時代を生き抜く覚悟と準備なのです。